本作りの精神

 田中栞先生の「本を作る」8回目の話です。
 最近珍しい作りの本が二つ出版されていて、その作り方、綴じ方の名称? に拘られております。本は、
  1、岸田将幸『〈孤絶 - 角〉』(思潮社、平成二一年)
  2、林望『謹訳源氏物語一』(祥伝社、平成二二年)
です。これらの本はとても奇抜な装幀となっていて、
  1、本文用紙を糸かがりして、折丁の背に接着剤をつけて固めてから、二ミリほどの厚み
    がある灰色の板ボールを表紙として取りつけただけのもの。背貼りは一切なく、透明
    のプラスチック・ジャケットを通して、剥き出しの背を見ることができる。
  2、本文は糸かがりで、背が剥き出しになっている。ただ、表紙は硬い板ボールではなく、
    並製本の表紙のように柔らかい用紙を使っているので、しなやかに曲がる。ちなみに
    こちらは書籍本体の外側に紙製のジャケットと帯がかかっているため、書店の店頭な
    どで外装を一見しただけでは、本の背が剥き出しの造本になっていることはわからない。
ということです。これについては『謹訳源氏物語一』の方に、著者のコメントが添えられ、
    本書は「コデックス装」という新しい造本法を採用しました。背表紙のある通常の
    製本形態とはことなり、どのページもきれいに開いて読みやすく、平安朝から中性
    にかけて日本の貴族の写本に用いられた「綴葉装(てつようそう)」という古式床
   (こしきゆか)しい装訂法を彷彿(ほうふつ)とさせる糸綴(いとと)じの製本です。
とあるそうです。
 わたくしなどには凄く斬新に映ったその「本作り」は「綴葉装」という、とても古風な方法であったことになり、なるほどな〜温故知新か・・・といったんは感心しましたが、田中先生はここで簡単に納得はされず、執拗に拘り、短期間に精力的な取材行動に打って出て、本来は「西洋古典籍の写本の形状の一つで、ペラものの文書類や巻物などに対して、糸を使った中綴じの折丁を基本として冊子状に仕立てたものを指す」意味の「コデックス(Codex)」とは「違う」のではないか? として、ついにはまったく新しい名称であるところの、

   「背出し装」

を考え出されました。
   「背の部分が剥き出しで、綴じ糸が見える」ということでは「綴葉装」もこの「背出し装」
   の一種ということになる
ともございます。この「背出し装」のネーミングの意味はとても重要なことかと思います。まさに「本作り」にすべてを捧げ情熱を迸らせる生き様が、この「本を作る」8回目の原稿の送受信の2〜3日間に露呈されました。

 わたくしが最初に原稿を頂いたのが27日の15時頃。翌日の夜に開いて読み、どんなものになるかと簡単に組んでみたのですが、なにしろ写真が12枚も入るというボリュームで、これはどうやっても納まらないな〜と悩んでいた時に「改稿版」が届いたのであります。このあたりの背景は先生のオフィシャルブログにも書かれていらっしゃるのでご覧ください。
 いったいどこを改稿されたのかを調べてみると、この「背出し装」の名称を引き出すために28日の午後から走り回られ「製本工房リーブルの岡野暢夫氏にも意見を聞」いたとあります。はっきり言いまして今回の原稿は通常より一週間ほど遅い入稿でした。それほど拘られて書きあぐね、調べていらした学術的に見ても「非常に重たい記事」となるようです。先生のブログには『冬雷』の大山敏夫編集長(月刊短歌誌)の記載がしばしば登場致します。わが冬雷は、豆本を主とする先生のサークルの方々にも、手作りを主とする製本家のサークルの方々にも、とても注目されるところとなっております。

 今回はややフライングの感がございますが、先生の8回目の記事を取上げながら、すこし興奮気味に書いております。本はやはり「作り方(装幀)」をぬきには考えれないでありましょう。中身を相応に引き立たせられる「本作り」は当り前ですが必要であります。
 みなさまも、どうぞここに取上げられております二つの本を書店でご覧のときは、手に取ってじっくりと造本の妙をご体験下さい・・・

 じゃ、このあたりで。そうそう、8回目は3頁に納まらないとみて4頁組みと致しました。こちらもお楽しみに・・・先生には「おしゃべりすぎた事」をお詫び致します。
  
  
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by t-ooyama | 2010-04-29 20:05 | Comments(0)

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