ヒヨドリ

ヒヨドリがよほどお好きだったのか、自らの施設にヒヨドリの名を多用した故椎田たかし先生のことを思い出す。
ヒヨドリって害鳥なのよ、だからほら、餌なんかあげちゃだめってばって言う声も聞こえそうだが、わたくしは隠れて食べ残しの林檎とか、パンとか窓の外において置く。ヒヨドリって結構かわいいものなのだ。
たしかに、ギャーギャーって感じの声はうるさいし、甘党で畑の野菜などもつついて食べちゃうようだし、薄汚れた灰色の体も鋭い眼光も嫌われる要素が多いのも確かだ。でもかなり頭が良い。人にもなつく。

子供がまだ小さかった頃、巣立ったばかりでうまく飛べない雛が道路でよたよたしているのを拾ってきたら、わたくしの運転する車の上を追跡してきたと見えて、親鳥とおぼしきひとつが窓の外で騒ぎ立てた。鳥かごに入れて窓の外につるしておいたら、その親鳥がせっせと餌を運んできた。
練り餌などもおそれずに食べるし、親鳥からのべつ差し入れられる餌もパクパク食べるしで、雛は順調に成育していった。ヒヨドリって実に雑食で、親鳥が運んでくるものは、時にドッグフードのようなものがあった。ボーっとしている犬が寝ていると、隙を見てヒヨドリに餌を盗まれるってことらしい。
そのヒヨドリはその後しばらくわが家にいて、手に止まったり頭に止まったりする。手渡しで餌も食べるようになった。特に水浴びが大好きで、台所で湯沸かし器の湯を出しているとすばやく飛んでいって頭からその湯を浴びる。「わー、朝シャンヒヨドリだ」って笑ったものだった。今なら動画配信でもしてみたいような光景がしょっちゅうだった。驚くことに、頭に止まらせたままで外を歩くこともできた。ずっと止まったままで飛んで逃げないほど慣れていた。まだまだ幼かったからであろう。
やがて野性に目覚めたヒヨドリは、我が家を捨てて大空へ向けて飛び去っていった。
かわいくて面白かったヒヨドリの思い出が今でも鮮明である。

さてさて、そろそろヒヨドリの精悍な声が聞こえてくる頃だ。
きたきた。
わたくしの餌にくる奴はどうも独身の若者(老かもしれない)らしく、いつも単独行動だ。
あたりを慎重に見渡し、だんだん近づいてくる。
きたきた。でも、後ろ向きになって周囲の観察に油断がない。
やっと納得したのか、ぱっと餌に降りてくる。
ぱく。ぱく。大きな林檎の欠片を飲み込もうと頑張っている。
「やや」という感じでわたくしと目が合う。
一、二度かるく頭を下げてくれた。
実に礼儀正しいのだ。

椎田先生も、こうしたヒヨドリの生態を良くご存知で、気に入られていたのだろうなって思う。
本当に椎田先生にはお世話になった。あんなに個性的で立派な医師をわたくしは他に知らない。
今日は椎田先生の残された作品でも読んで過ごそうと考えている。
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by t-ooyama | 2013-04-05 11:37 | Comments(1)

Commented by azusa at 2018-06-26 13:20 x
朝シャンヒヨドリなんて!そんな楽しい思い出をお持ちだったのですね。一緒に暮らしていると情が移りますね。私はカラスの子供を拾ってキャットフードで育てたことがあります。なかなか飛べるようにならず、私ではお手本も見せられないので毎日はらはらしましたが、今では子供を連れて帰ってきます。

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