角川短歌賞
その誌上での発表を前に、「短歌」十月号には別冊付録として素晴しいものが付いて居る。『角川短歌賞 受賞作品集』がそれ。B6判の並製本、本文128頁だが、なにしろ過去60年に及ぶ歌壇の登竜門として注目の新人賞を纏めて読めるのだ。こういうのはもっと本格的に作って発売しても結構売れるんじゃないかと思うが、編集部の有難いサービスじゃないだろうか。
目次見開き二頁に、第2回から59回までのタイトルと作者名が並ぶ。第一回目が無いのは該当者が居なかったらしい。鳴り物入り? で始まったかもしれないこうしたビッグな賞が該当者無しからのスタートだったというのも面白い。
二回目、安永蕗子。5回目、青木ゆかり。7回目、浜田康敬。14回目、小山そのえ。15回目、河野裕子。19回目、宮岡昇。20回目、鵜飼康東などというお名前を見ていると、若かった自分が、こうした方々との交流の思い出の中から浮んでくる。たしか鵜飼氏が受賞した時の次席が冬雷会員三次をさむ、であった。その時の選考委員の声の中に、実力的には三次作品の方が上だが、その環境が最後までのプッシュを躊躇わせたという雰囲気のコメントがあった。三次は、亡き師匠が指導していた死刑囚であった。
河野裕子は「桜花の記憶」で受賞したが、そのタイトルは処女歌集に採用されている。わたくしとは同年で、雑誌「短歌」での小特集「若ものの歌」では一緒に作品を出したことを思い出す。その特集には、早稲田在学中の福島泰樹氏も武闘的な歌を発表していた。彼は直後に処女歌集『バリケード1966年4月』を上梓するが、いま取り出してみても鮮烈な美しい歌集である。
別冊付録を捲りながら、勝手な昔の記憶に遊んだ。
冬雷ではかなり前より別冊付録をサービスで付ける企画を進めているが、歌壇総合雑誌でも最近付録がよく付くようになっている。そういうなかで、今回の角川短歌の付録は出色である。
ぜひ、皆さんもこの小冊子をゲットされたい。「短歌」十月号はお買い得だ。
各回の作品が見開きで、50首ずつ並んでいる。
読み応えある小冊子である。
by t-ooyama | 2014-10-26 23:43 | Comments(0)