歌集『文語定型』について
歌集『文語定型』の著者から葉書が舞い込む。
過日は拙歌集『文語定型』の御感想の御手紙をありがとうございました。また、インターネットでも御紹介頂き有難うございます。
とあった。
この歌集は覚えている。たしか題名の個性的なのは挙げたけれども、記事では口語不定型短歌についてだけ、このブログでは書いた筈だ。それを御紹介だなんて言うとは丁寧な方である。
御選び頂きました四首のうち、前から三首は大山様のみ選んで頂いたもので作者としてはとてもうれしく思いました。「両岸は」もほかに一人いるだけでした。
ともあった。
小生は、受贈した歌集類への礼状を基本的にほとんど出す。その場合、前半には「礼状フォーマットを使い、著者名本名を打ち込むだけのものを作る。そして、これだけじゃ仮に貰う立場になったとしても有り難味が薄いので、必ず、コメントと幾つかの作品を挙げることにしている。
簡単な感想と歌の選出。でも、これは実際は本当に厳しい仕事である。そんな折の心情等はこのブログにも度々書いているが、対象によっては選び出したくとも一首も選べない、というレベルのものも多いのだ。また、短いコメントにも手を抜かず、直感的に浮かぶ印象をまっすぐに書くことにしている。
『文語定型』に何を書いたのか、保存してあるものから調べてみた。
新歌集のご上梓まことにおめでとうございます。
大切な一冊をわたくしにまでお届け賜り厚く御礼申します。
最初は短歌論かなと思った集名ですが、歌集ということで驚きました。まさにズバリの命名で、覚悟が感じられます。
死に至る苦しみの量思ひみれど犬は黙せり風に吹かれて 30
夕ぐれの大き十字路見下ろしぬ生きねばならぬものら行き交ふ 56
すいめんにただよふ亀と岸にたつ人間われと如何ほどの差か 95
両岸は闇に沈みてただ白くのびたるものと川はなりたり 48
心に止ったものを挙げましたが、確固と流れる定型の格調は気持よいものがあります。歌の重要な要素ですからね。
特に最後の一首、冷徹な簡略のきいた写生となって、印象的でした。
先ずはとりいそぎ、お礼とします。
平成二十九年九月二十一日
とあった。
著者上條雅通氏の仰有る四首が鮮やかに甦った。これはみな良く覚えている四首である。
最初の三首は、小生だけが印を打って書き送ったのだとある。そして四首目が、他に一名挙げた方がいた。
ナルホドと思った。
コメントにある通り、輪郭のくっきり解る歌で文語定型をきっちり基本としていて気持よい。三首目までは作者の日常的な動作が感じられて温かみがあるが、四首目は違う。これは象徴的に捉えられた自然描写に徹している。
今読んでも、四首目が一番響いてくるようだ。何がどんなふうに? と問われても、即答しかねるモノが響き迫ってくるのである。歌ってそんなものじゃないのかと思う。口語訳すると、如何にも面白くない、だから訳することもうまく出来ないけど、でも何故か響き迫って来るモノが有るよねっていう感じか。
改めて『文語定型』はレベルの高い歌集だと認識した。
実は、上條氏のように、小生の礼状に対して折り返しお便りを下さる方は稀にしかいない。まあ、殆どの方は歌集を寄贈したのだから礼状が来るのは当り前って考えていらっしゃるようである。
この上條氏の葉書は、ひさびさに舞い込んだ「鄭重なるお便り」であった。
自分が出した御礼状は一応みな保存してある。
だが、実際の歌集は手許に無い。
すでに小誌への紹介を書く候補の一つとして、担当の桜井さんへ送ってあるのだ。
いずれ掲載されると思うが、順番なので、もうちょっと先になるかもしれない。
by t-ooyama | 2017-11-24 18:47 | Comments(1)
Commented
by
広報桜井
at 2017-11-26 14:47
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2017年9月発行の『文語定型』こちらにございます。ただいま5月発行分を書いておりますので、少し先になりますが、拝読して紹介させていただくのを楽しみにしております。
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