岩田晋次先生追悼
留守電にはいっていた京都弁の女性の声。
それは驚きの内容だった。
昨年十一月七日に「岩田晋次」が亡くなりました。
冬雷様には存命中格別のお世話になりました、有難うございました。
というような言葉が聞えてくる。
岩田晋次先生は、国語学者で歌人。歌誌「ハハキギ」の田中順二先生に国語・国文・作歌の教えを受けたと述べていて、個人誌的雑誌「枝折戸」を発行し、文法の話をテーマとする短歌制作と指導活動をしていらっしゃった。個人誌的というのは、費用はすべて岩田先生持ちのようながら、誌上には複数の方の作品や情報などが掲載されていた事による。
岩田先生の好著『短歌文法65講』(京都カルチャー出版刊)には、小誌で問題提起した太田行蔵著『四斗樽』記述を全面肯定し、精しく解説する頁が12にも及んでいることから、小生も高く評価し、最近でも、冬雷大会の互選高位者への賞品にしようと思って、問い合わせたが、絶版状態で叶わず、変りにぐっと解りやすい『高校生の古典文法』(京都書房刊)という参考書を取り寄せたこともある。
田中順二先生にも素晴らしい文法の著書がある。『短歌文法入門』(短歌研究社刊)である。この三冊は、下の写真の様な本となっている。
小誌会員の皆様には、ぜひ購読して欲しい三冊だ。
『短歌文法65講』(京都カルチャー出版刊)については、その書き出し部分を写真でご披露する。下である。
小生は文法を苦手として居り、悩んだ時にはいつも岩田先生にお願いしてご教示頂いて来た。先生からの書簡も多く保管していて、今でも時折復習する。勝手に「大山の短歌文法の師」と決めていた。
七年前に膀胱癌で全摘手術を受けたのち、先生からお便りを戴き、先生が同病で二回目の手術を受けたのだということを知った。先生の場合は小生より軽く、内視鏡による搔き出し手術で済んで居り、この場合は、数年後に同じようにポリープが出来ることが多く、何度も手術を受けるようなのである。小誌の先輩の加納久氏もこの手術を受けていた。
膀胱癌、同病あい労る関係ともなる。
岩田先生がお亡くなりになったのは膀胱癌ではなく、胃癌であった。
胃癌の手術そのものはうまくいったものの、術後の食事療法がうまくゆかず一年半の入院のままの御他界であったという。
「早く家に帰りたい」が口癖でしたと、奥様のお便りにはあった。
どうも最近「枝折戸」が来ないなあと思ってはいたが、小誌の雑務に奔走しお伺いする余裕が無かった。
こころよりご冥福をお祈りするばかりである。
合掌。
by t-ooyama | 2018-02-06 12:42 | Comments(0)