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飯島由利子氏「あかね」を創刊する

旧「水門」の飯島さんは、「水門」廃刊後に「炸」に移られ、存分に実力を発揮し、「炸」の誌面に活気を齎していたが、この程「あかね」を創刊された。本日その美しい創刊号が届いた。
そこに同封されたお便りには、昨年末に「炸」が解散されたことが記されていた。そこで急遽、飯島さんのグループ19名が団結して、この「あかね」の創刊に踏み切ったらしい。やはり歌作りにとって、その作品発表の場がなくなることは重大なマイナスなのだ。いくらのブランクもなく新雑誌を作り出帆した飯島さんに「おめでとう」と言いたい。
そして頑張って「場」を作り出した勇気に敬意を表する。

本文をざっと見ていると、こんな歌が目に留まる。

 つまだちてエレベーターのボタン押す児は木の家を恋しいといふ(吉田修子)

 子育てを終へたるをみなの年忘れオヤヂ育ての話のつきず(同)

 コントラバスの音色深しも静かなる十五歳の憂鬱ふるはせながら(近藤井美子)

手のひらに重さをはかる無花果のはつきりとせぬ甘さを好む(同)

花の咲く庭のにぎはひ今はなく高齢化の町色の失せたり(遠藤碧)

 ひと月を咳き込みつづくこの冬は冬眠のごとただ縮こまる(同)

 わたしたち濃厚接触よねなどとダンスなしつつ感染ばなし(長谷川良子)

 素話を聞きゐる子らは想像の世界にいつしか入りてゆくらし(北澤美枝)

 泣きやまぬ弟あやす姉四歳ひとつぶひとつぶボーロ含ます(同)


やはり長いキャリアを感ずる基本のしっかりした作品ばかり、そして何か弾むものを含むパワーも秘めている。

これだけの歌がずらっと並ぶ誌面を持つ短歌雑誌は読み応え十分である。

新しい「場」を求める気持はきちんと伝わってくる。

飯島さんの歌は、


 鶏のこゑにたちまち朝の気の陰より陽へ移りゆくらし(飯島由利子)

 絵のやうな伏せ籠に餌食みてゐし鶏ほろりと卵落としたり

 農夫より今朝一番に産みたるといただく卵の透きてぬくとし

 鶏の朝明のこゑの厭はれて陽の気みたぬ世となりゆかむ

 寝ね際につくりやりたる玉子酒 肝病む夫のはかなく酔ひぬ


鶏(くたかけ)の一連。古事記の世界から転じて、現実の鶏へと導くのだが、中にはご病気のご主人のご様子も歌われ、幻のモヤっとしたものから、次第にはっきりした世界へ移ってゆく過程が興味深く読める。


「あかね」の発展を祈りつつ、その美しい表紙をご覧いただく事にしたい。


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追記(訂正)

今のソフトWardは、どんどん進化して小生のような老人に使いにくくなっています。
ああ大丈夫「確定キー」を押すと、瞬間変化して次候補の文字で確定ってことがしょっちゅうです。
ここでも「飯島由利子」氏のお名前を誤変換してしまいました。お詫びします。
人のお名前の間違いは重大ミスですね。
失礼しました。
訂正させて頂きます。(4月27日)





by t-ooyama | 2020-04-18 23:44 | Comments(0)

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