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スマホの写真一葉・短歌二首 10

標記の十回目。
この企画も馴染んできて、歌壇でも注目されつつある。「長風」6月号において本木巧氏が、3回目を取り上げて好意的な批評を下さった。
近々小誌にも転載したい。

今回は美しい紫陽花の花。
澄み透るような自然林の中での自然と人間との情感が交流する深みのある一葉である。
深い樹林の中の、様々な緑が克明に写し取られ、もちろん、明るい緑の葉に露の滴る紫陽花の花が主役だが、
太い樹の根元の幹には年輪を感ずる苔なども生えて匂うようだ。
山紫陽花の花に焦点を絞るカメラの主は作者の雰囲気が備わった娘さんのようである。
その若い女性を、後ろから撮影する作者は、花と人物と同時に自然の中より切り取ってしまう。
写真の背後にさらに暖かい人の眼を感じさせるのが、狙いであろう。

ではご覧ください。





スマホの写真一葉・短歌二首10

橘  美千代

わが前に山紫陽花を撮る汝がわれに撮らるるひびくシャッター音

久しぶりに使ふカメラを調整する汝かあぢさゐにレンズを伸べて


スマホの写真一葉・短歌二首 10_c0216213_12374745.jpeg


by t-ooyama | 2020-08-10 13:01 | Comments(3)

Commented by 桜井美保子 at 2020-08-11 10:21 x
自然林の濃淡の緑と山紫陽花だけでも美しいがさらにカメラを構える若き女性の姿を一枚の写真に収めている。カメラを構える女性は娘さんらしい。
即詠二首のうちでは二首目が光っている。山紫陽花を接写する様子が温かく詠まれている。この紫陽花は額紫陽花とは違う。野趣に富んだ花で額紫陽花よりも葉が細く厚みがない。

一首目は自然林の静寂の中、山紫陽花にカメラを向ける娘さんを撮る作者のシャッター音が響いたと読んだが「わが」「われ」と言葉が重なるので初句の「わが前に」は工夫できそうだ。どこの自然林なのかを入れてもいいし、単に「自然林の」という言葉でもいいかもしれない。
あまりに緑が美しいこの写真が掲載時にカラーではなくなってしまうのが惜しいが、幸いペーパーレス版ならカラー写真なので、またホームページ上で楽しめる。素敵な写真と歌をありがとうございました。
Commented by 小林芳枝 at 2020-08-16 11:41 x
連日35℃越えの猛暑のなかで目も心も爽やかになる嬉しい写真に暫く見入ってしまった。そういえばこんな自然を長く見ていないなあ、どこからか沢水の流れる音が聞こえてきそうな感じもする。レンズの調整をしながら接写に集中している娘さんと中心の萼片のひとつが向き合っているようにも見えてくるけれど、この写真の中に流れているのは沢水なんかじゃなくて娘さんへの思いなのだろう。普通に過ぎてしまうような一瞬がすてきな一枚になっている。
1首目は、3句の「汝が」を「汝を」にしてみると下句に余裕ができるだろう。
2首目は、カメラ好きの娘さんを想像させてくれて思いが広がる。
少し暑さが引いてきたような気がする。
Commented by 稲田正康 at 2020-08-25 00:30 x
1首目 「撮らるる」は連体形ですから、一読、これは「シャッター音」につながるものと読んでしまいます。すると「ひびく」が後ろに来ないと落ち着かない。ここを連体終止と考えるのは少し無理でしょう。一旦終止して言い直すのなら「撮らる」ですが、一音足りないから「写さる」にするか?
2首目「調整する」を作者が、と読んでしまいました。これも「汝が」なのですね。それが少しわかりにくい。
それから紫陽花はアジサイの読みが定着していますが、「山」などとつないで熟語にする時は「山あぢさゐ」のように仮名を使われた方が読みやすいと思います。

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